星のムーンサルト

タロットについてのあれこれ

法王

法王のカードは、法王を真ん中に2人の司教が並ぶことで正三角が作られる。正三角は神への祈りを象徴する図形であることから、信仰や祈り、保護を意味するのがこのカードである。

変わっていく景色の中で変わらないものがある、そのことは私たちの所在なき心を無意識のうちに落ち着かせている。辛いことがあった後で、昨日となんら変わらない1日があること。いつも通る道に、どんなときも変わらずに佇むお店。毎朝同じ時間に洗濯物を干しているお母さんに挨拶をすること。全てはいつかなくなってしまう、そんなことはわかっているけれど、この変わらなさができるだけ長く続いて欲しいという願いは私たちの未来へのささやかな祈りである。

いつもはそんなことは感じようとしないし、調子のいい時は見向きもしない、けれど人の優しさに触れたときにふんわりと見えることがある。祖母がお茶を淹れる時の丁寧な仕草だったり、祖父が唯一作ってくれたごはんに込められた思い。父が作る日曜日の朝ごはんの豪華さや母がこっそりクローゼットの中に自分だけのお菓子を隠し持っていたこと。人が日常を祈るように生きている痕跡を。


どうか、大切なあの人が今日も笑顔でいられますように。
どうか、わたしのような思いをすることがありませんように。
どうか、何事もなく1日が平和に終わりますように。
どうか、1日でも長く、この世界が続いていきますように。


そんな美しく哀しい、人間のちいさな祈りが、神という偉大なるものを作り出したのかもしれない。